会長のあいさつ
●ご挨拶
令和2年2月1日に開催されました本研究会総会におきまして第12代会長に選出賜りました池田清和と申します。よろしくお願い致します。本研究会は、ご承知の通り1974年に設立され、およそ半世紀を迎えつつある伝統ある研究会であります。研究会では、穀物科学に関して多彩な面、特に実学面等を中心として討議し斯界の発展に少なからず貢献して来たと考えられております。瀬口正晴前会長始め歴代の会長は、永い年月の中<研究会の偉大な伝統>を構築されてこられたと感じております。私としましては、微力ながら、この<偉大な伝統>を引き継ぎ、さらには発展させていきたいと考えております。特に、初代会長米澤大造先生や第5代会長松下雪郎先生には個人的に大変お世話になった先生方であり、両先生の卓越したご見識の深さを回顧しながら研究会の運営を発展させていきたいと考えております。 私の恩師は、米の研究者として世界的に活躍された満田久輝先生(京都大学名誉教授、文化勲章受章者)であります。私も当初は米の研究を行っていましたが、米研究を通じ、同じ穀物である蕎麦に興味を覚え、蕎麦を中心として大豆などを含め伝統的穀物食品について永く研究して来ました。AACC(現CGA)には約40年前に会員になり、現在は終身会員(Life member)にして頂いております。米研究第一人者のB.O.Juriano(フリアーノ)博士(国際稲研究所)や、小麦研究第一人者のR.C. Hoseney博士(元Cereal Chem.編集長、米国)やG. Crosbie博士(ASW開発者、豪州)、W. Bushuk博士(カナダ)、食物繊維定量法を確立したL. Prosky博士(FDA)などとAACC国際会議等で楽しく談笑したことを思い出します。他方、ヨーロッパのICCについてはH. Glattes博士(元事務局長)を1992年に訪問し、爾来ICCから諸情報を頂いております。 さて、我が国は、現在世界一のレベルの長寿国であります。日本人の長寿には、我が国古来の伝統的食事、特に穀物を中心とした一汁五菜などの多彩な食事を摂取することが深く関係していると推察されています。しかしながら、現在は良いが、今後の半世紀先にはどのような栄養状態になっているのかを極めて危惧するところであります。我が国には弥生期以来食三千年の歴史があり、米、小麦、大豆、蕎麦などの伝統的な食材を用いた手作りの食事を摂取して来ましたが、現在ではインスタント食品など簡便な食事が簡単に摂取できるようになっています。はたしてこのような現代的食事で良いのであろうかという疑問が湧いて来ます。簡便に入手できる食品には、人々を満足させるように、美味的要素である高脂肪、高糖質、高塩分などであることがよく見られます。私達はこのような美味たっぷりな簡便な食品をついつい食し、肥満などを誘発させることが多いと考えられています。肥満は、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病罹患の出発点になると考えられております。脂肪や糖質・塩分に溢れた食事形態にならないようにするには、米や小麦、大豆、蕎麦など、わが国古来の伝統的穀物食品を大いに活用した食生活を送ることが,私達の健康維持・増進のためには肝要だと考えられます。食生活指針(文科省/厚労省/農水省)には「ごはんなどの穀類をしっかりと」と謳われています。他方で、現今「人生100年時代」と厚労省は謳っております。人生100年時代を構築するためには、私達日本人が食三千年、永く継承して来た伝統食品、中でも伝統的穀物食品を継承し、利用することが、<100歳長寿時代>を構築するために重要であると考えられます。日本穀物科学研究会におきましては、我が国の人生100歳長寿時代の実現に向けての<伝統的穀物食品の良さを探る>ような穀物研究を強く発信していきたいと念じております。 プロフィール 1972年3月 京都大学大学院農学研究科農芸化学専攻修了. 1972年4月 神戸学院大学栄養学部に研究助手として勤務. 講師,助教授を経て教授. その後,学部長,法人理事,法人評議員,図書館長などに就任. 1982年1月 AACCI (現Cereals & Grains Assoc.)会員,現在はLife Member. 1983年8月 国際蕎麦学会(International Buckwheat Research Association, IBRA)会員. IBRAが3年毎に世界各地で国際蕎麦シンポジウムを開催することを決定. 1987年7月 京都大学農学博士. 1999年1月 国際蕎麦学会(IBRA)・学会誌副編集長(Assoc. editor, 〜2007) 2002年2月 Advances in Food Sci. & Nutri. (Academic Press USA)に蕎麦の総説執筆. 2007年8月 国際蕎麦学会(IBRA)が, 第10回国際蕎麦シンポジウムを開催し, 第10回を記念して学会賞を制定. 世界の著名な蕎麦学者7名と共に池田が当学会賞を受賞した. 2008年1月 国際蕎麦学会(IBRA)・学会誌編集長(Editor-in-Chief, 〜2017) 2010年7月 全麺協・第6回日本そば大学・学長に就任. その後第10回日本そば大学に再度学長(2014年)に就任. 2016年1月 “Molecular Breeding and Nutritional Aspects of Buckwheat (Elsevier,Amsterdam)” Chap. 15: Factors important for structural properties And quality of buckwheat productsを執筆 2017年12月 日本栄養改善学会近畿支部学術総会・会頭. 2018年 1月 国際蕎麦学会(IBRA)・名誉編集長(現在に至る) 2018年4月 神戸学院大学名誉教授(現在に至る) 等々 |
日本穀物科学研究会
会長 池田 清和
会長 池田 清和